プラスチックのリサイクル原料は、今まで色々な製品に再利用されてきました(但し、口に入れる容器以外)。例えば、育苗箱(PP)、移植鉢(PE)、魚網フロート(PE)、ハンガー(PS,PP)、ゴミ袋(PE)、漆器(ABS)、マンホールの蓋(PP)、荷物運搬用のパレット(PP,PE)等など。
近年日本では省力・効率化で、ロボット稼動の成形機が増え、少しの原料のブレでも機械がSTOPする為、オフグレード品(以下OG)やリサイクル原料の使用が全体的に随分減少しました。
種類ごとにいくつか述べますと、従来、ゴミ袋(黒色、青色)にはポリエチレンのリサイクル原料が多く使用されていましたが、最近は分別収集の為、中味の見える透明品、各家庭からの量を制限する為に統一袋の使用となり、再生品の需要が少なくなりました。
育苗箱などはPPの再利用にはもってこいの製品ですが、以前は全てグレーで統一だったものが、最近大口需要家であるJAさんの一部が、リサイクル品では出来にくい色の製品に変更し、リサイクル原料は需要減の傾向です。
その点、漆器は表面に漆塗装を施すので、リサイクル原料の使用に問題はなく、ABSとアクリルのリサイクル原料を大量に使用してきました。ところが、近年中国などから安値な輸入製品が流入し、ここでもリサイクル原料は苦戦中です。
ここ数年、一級品の価格がひどく下落し、今から示す目安はあまり当てはまらなくなってしまっていますが、まずは参考程度として読んでみてください。一般汎用樹脂1キロとガソリン1リッターが同じ値段と言われた頃の目安です。
尚、この目安は全く正式なものではなく、単なる私観ですので、その辺り誤解なきようお願いします。
現在は状況が変わっていますが、以前は、オフグレード品(以下OG)、リサイクル(リプロ)ペレットの価格は、基本的には下記の計算をしました。
オフグレード品 | 一級品価格の10%ダウン(一級品100円/kgなら90円まで) |
リサイクル品 | 一級品価格の20%ダウン(一級品100円/kgなら80円まで) |
※PE等のOGの場合は、使用前にロットごとのメルトの測定をして均一タンブラーをする必要があります。
OGには、極めて一級品に近い“ニアプライム”から“ロット無し”までありますので仕入価格はまちまちです。
次ぎにスクラップ品(未粉砕品)の価格の出し方です。スクラップ品の形状、樹脂種類により異なりますが、スクラップ品を引き取ってから、押出し機でリペレットし、顧客に販売するまで、最低下記のコストが掛かります。
※スクラップは、小さなスプールランナーからシートや、粉砕の大変な団子(PEラミの団子は一塊200kg 以上の重さのものも有ります)そして、運賃の嵩む大型成形品(4t車に数百キロしか積めないものもザラ)など種類によって運賃や粉砕賃などのコストが異なります。
スクラップ賃 | 5〜10円/kg位※買取賃 |
引取納品運賃 | 10〜20円/kg位 |
粉 砕 賃 | 15〜30円/kg位 |
リペレット賃 | 25〜50円/kg位 |
例えば、ビールのコンテナ用のリサイクル原料が80円/kgで売れる場合を参考に試算すると、
5円(買取賃)+25円(粉砕賃)+30円(リペレット賃)+10円(引取納品運賃)=70円
で、売買利益は10円/kgということになります。
但し、最近では同リサイクル品の取引価格は、80円/kgなどとんでもなく、全く採算が合わなくなっています。結果、スクラップ発生元より買い取るのではなく、引き取り賃を貰ってリサイクルをするということになってきたわけです。
(余談ですが、最近では鉄の価格が暴落して、鉄クズですらお金を付けて処理してもらうそうです。)
尚、フイルムの原反やクズなどのリサイクルは、直接フィルムを押出し機に引きこみ(直がまし)リペレットするので、粉砕賃は要りませんが、ゴミの付着程度によって金網(スクリーン)の交換回数や使用する網の細かさ(メッシュ)により吐出量が異なりコストが変わってきます。
また、日本中の魚市場で大量に発生する発泡スチロールの魚箱(トロ箱)は、軽いので熱をかけて溶かした後、型に注ぎ冷やして固め、Aランプと呼ばれて輸出されてます。固めるコストは30円位はかかりますが、GPPSの一級品の価格が安い(US$480/t)ので赤字出荷だと思われます。以前はGPPSの価格はトン当り、スチレンモノマー〔SM〕価格+25,000円(日本製一級品) と言われていましたが(国外一級品〔t〕=SM価格+20,000円)、最近では香港でSMとほぼ同価格で GPPSの一級品が流通するといった暴落ぶりですので話になりません。
最近原料メーカーの合併が相次ぎ、円高による輸入原料の増加で、国内でもプラスチック原料価格下落のニュース多くなりました。一級品の価格が下がると、当然リサイクル品の価格も下がり、正直現状の価格では、国内のリサイクル業者も採算が採れなくて(発生は少ない上、売れない)辛抱の限界に来ていると思われます。
リサイクルされなければ、廃棄物として処理され日本中がゴミの山になるのは目にみえています。どうにかせめて採算の採れるレベルに(つまり、適正価格に)戻ることを願わずにはおれません。また、こういった時期には、我々輸出業者が連携して、国内で採算の合わないスクラップを人件費の安い国に喜んで利用してもらえるようにするのも一つの方法だと考えております。
〔執筆担当:本城守 1999年2月〕