プラスチックの基礎知識「プラスチックの特長と見分け方」

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プラスチック判別法

 プラスチックの特徴と簡単な見分け方についてご紹介致します。

ただし、これは私達の今までの経験からくる見分け方ですので、専門的なものではありません。 本城化成流の見分け方です。


 プラスチックのリサイクル原料は成形時の不良品、ロスに加えて一般家庭、オフイスで使い古された製品など多種多様です。それらがプラスチックの種類ごとにきっちりと分けられていて初めてリサイクル原料として価値を持ちます。
 異なった種類のプラスチックが混入した原料は、成形時、成形後様々な問題を引き起こします。具体的には融解温度の違いによる成形不良、成形品表面のフラッシュ、ピンホール、更には、強度の低下など成形品の商品価値に関わる重大な問題です。そのため、我々リサイクル業者は、収集後のプラスチックの選別に最大限の注意を払い、原料の品質を守るよう心掛けています。


※本来は異なった種類のプラスチックが混ざると、物性が低下してリサイクルには良くないのですが、融解温度の高いプラスチックの中に融解温度の低いプラスチックが少し混ざった場合は、リサイクルも可能です。例えばPPの融点は180℃、PEの融点130℃です。PPの中に多少PEが混ざっても、少し強度は落ちますが成形は可能です。逆に、PEにPPが混ざった場合は、PEの溶解点ではPPは溶解せず、製品が"千枚めくれ"といった症状を呈し強度が極端に落ちて使用できなくなります。

プラスチックの特長と簡単な見分け方

 まず、燃やしてみる

 

ライターとメガネレンチ

プラスチックの表面をライターなどで少し燃やして、溶けるものは熱可塑性プラスチック(リサイクル利用可能)と考えて良いと思います。溶けた部分を引っ張って糸状に伸びるようなら押出機(ルーダー)で再生出来るということです。通常プラスチックの見分けは火で燃やし、燃え方と 臭いで判別します。

 

 

燃やして黒煙がでないプラスチック
燃やして黒煙が出るプラスチック

PE,PP等のオレフイン系プラスチック
,PMMA(アクリル)ほか

黒煙なし

PS,ABS等のスチレン系プラスチックほか

黒煙あり

POM:燃えているのか消えているのか分からない PVC(塩ビ):火がつかず塩素を出す

燃やすと危険です

 

代表的なプラスチックの特長

代表的なプラスチックの特徴について、その性質や用途などを具体的に紹介します。

PE:ポリエチレン(LDPE, HDPE. LLDPE, EVA) 通称;ポリ

本来の色は半透明、火を近づけるとすぐ軟化して、垂れながら燃え、ローソクの臭いがします。

LDPEは射出成形、押出成形(フィルム、シート、電線)、中空成形など用途が広く、柔らかいプラスチックです。フィルムの場合、引っ張って伸びるようならLDPEです。
HDPEもLDPEとほぼ同じですが、LDPEに較べると硬いプラスチックでポリバケツ、灯油カンなどが代表例です。フィルムの場合、引っ張っても伸びません(例.オシボリの袋)。LDPE、HDPEの違いはペレットを歯で噛んで硬さで判断します。

LLDPEもLDPEと大きな違いはありませんが、フィルム用途が中心でLDPEより引っ張り強度に優れています。 EVAは柔らかくタッパーウエア等がその代表例です。

ポリバケツ 灯油カン おしぼり包装

PP:ポリプロピレン 通称;ピーピー

洗面器

燃えやすく甘い臭いがします。

その組成によりホモ(単独重合体)、コーポリ(共重合体)、ランダムと分かれます。これらは使用用途により選択されますが、一般にホモは鮮やかな色彩に着色できますが、コーポリではできません。そのかわりコーポリは耐衝撃強度がホモより優れます〔代表例:洗面器(ホモ)、洗濯機の脱水槽(コーポリ)〕 。

日用品・雑貨から家電製品のパーツ、ゴムなどを添加し耐衝撃性を向上させ自動車のバンパーなどにも使用されます。 フィルムではOPPフィルム(延伸)、CPPフィルム(無延伸)など透明度が高く、タバコの包装材、菓子類の包装材によく使われます。

バンパー

PS:ポリスチレン 通称;スチロール、スチ

ヨーグルト

すぐ軟化、多量の油煙(黒煙)を出して燃えます。またガソリンに溶けることも特徴です。

GPPSと耐衝撃強度を備えたHIPSとに分かれ、用途によりGPとHIを混ぜ合わせて使用します。
GPPSは、本来透明で硬いプラスチックですが衝撃に弱く、アイスクリームの匙や透明の定規のほか、OPSシートは、使い捨ての弁当箱の透明蓋などに使用されます。

またGPPSを発泡させたもの(EPS)は、発泡スチロールとして知られています。尚、この発泡スチロール製のトロ箱は、魚市場で使用されますが、衛生上の問題で一度きりの使い捨てとなります。よって築地市場などから使用済トレイ、トロ箱が毎日大量に発生します。これらを減溶機にかけ熱で固めたものは、業者間で『Aランプ』と呼ばれ、安価で中国に輸出されています。(最近値が上がりました)
トロ箱

一方HIPSは、耐衝撃性の向上にゴム成分を添加しているため透明度がなくなり乳白色になります。アイスクリーム、ヨーグルトの容器や洗面台のボディ用シートなどに使用されます。尚、添加するゴム成分を改良しGPPSと同じく透明性を確保した透明HIPS(クリアレン、アサフレックス、Kレジンなど)もあります。
弊社が輸出するHIPSの粉砕品は、中国で『Aランプ』とブレンドし、適度の耐衝撃性を備えた黒ペレットにリサイクルされ、玩具や米国向のビデオカセットテープ用の原料として使用されます 。

 

ビデオカセットテープ

ABS 通称;エービーエス

フロッピーディスク

PSに似て、多量の油煙(黒煙)を出して燃えます。PSより幾分シンナー臭く感じるはずです。PSと異なりガソリンには溶けず、耐薬品性に優れています。

アクリルとブタジエン(ゴム)とスチレンを重合させたプラスチックで、HIPSより弾性があり、表面に艶があります。従来、テレビ、掃除機などのボディや今ではあまり見ませんがフロッピーディスクに使われていました。また自動車のコンパネなど内装部品やラジエーターグリル(フロントグリル)やスポイラーなど外装材にもよく使用されています。

フロントグリル

PMMA:アクリル(AC) 通称;アクリ

一般タイプは自然に燃えて、糸を引き、消した後アブクが出来たようにふくれます。黒煙は出ず、セメダインのような匂いがします。

一方、厚物の板などに多いCASTタイプは、燃やすとパチパチと音を出して燃え、火を消すと燃えた後がツルッとしていて糸は引きません。一般タイプ同様黒煙はでません。 このCASTタイプは、糸を引かないため押出機によるペレット化はできません。リサイクルは材料を大きな釜に入れて炊き、気化したガスを冷却して出来た液状モノマーをガラス板などで作った型に流し込み板を作る(還流)という方法をとります。弊社から中国に送られたCASTタイプシートのハギレは還流されて麻雀牌となり中国の人達の娯楽道具として活躍しています。

コスモ石油看板 さて、アクリルは透明度が高く、極めてガラスに近いプラスチックです。ディスプレイなどに使われる導光板、カーポートや窓材などの建材のほか、ガソリンスタンドの大型看板やバスタブ、自動車のウインカーやブレーキランプにも使われます。また蛍光灯のカバーや傘など照明器具にもよく使用されます。海遊館など水族館の水槽もアクリルです。 ブレーキランプ
バイザー

アクリルにゴムを入れて耐衝撃性を向上させたIRタイプもあり、自動車のドアに装着する雨よけサンバイザーなどに使われています。IRタイプはゴムが添加されているので燃やすと 黒煙が出ます。IRタイプの粉砕品はよくABSに増量材として好んで添加され、プラスチック製漆器などの材料となります。

尚、アクリル繊維はプラスチックとは少し異なる物質で、リサイクルできません。

PA:ポリアミド 通称;ナイロン

エンジンカバー

燃え難く、黒煙は出ません。羊毛の臭いがします。

6ナイロンと66ナイロンを見分ける目安は、火をつけて溶けた部分より引っ張った糸が、6ナイロンは細く長くよく伸びますが、 66ナイロンはすぐ切れ易いことです。
用途は、テグス、ギア、パンテイーストッキング、バトミントンの羽根のほか、耐熱性能が高いためエンジンカバーなど自動車エンジン周辺の部品にもよく使われています。耐磨耗性も高く弊社が輸出したリサイクル原料は、事務用椅子の脚部やキャスターなどの原料として多く使用されています。

キャスター

POM:ポリアセタール 通称;ポリアセ

歯車

燃やすと青い炎が出て、目を刺激するホルマリン臭がする。燃えているのか、消えているのか判別しにくいので注意が必要です。

耐磨耗性、耐衝撃性に加え耐熱性、寸法安定性に優れており、自動車や電子機器等のギア、ローラ、軸受など工業部品として使用される。身近なものでは、ブラインド、ロールスクリーンなどの巻き上げチェーンやカーテンフックがあります。ポリプラスチックス社の『ジュラコン』が最も有名です。

PET:ポリエチレンテレフタレート 通称;ペット

燃え難いが、甘酸っぱい臭い。糸は良く引きます。

ご存知のようにペットボトルは、清涼飲料水のボトルとして使用されています(キャップはPP)。
他に惣菜カップの透明蓋などの食品包装用途(A-PET)や、ビデオテープ、オーディオテープなどの磁気テープ、最近では携帯電話などのディスプレイ部分のフィルムとしても使用されています。

尚、洋服の素材ポリエステルとはこのPETのことです。

ペットボトル

PBT:ポリブチレンテレフタレート 通称;ピービーティー

電子部品コネクタ

 名前から分るようにPETの親戚で、鋼性に優れ、磨耗が少なく、高い温度で使用できる上、電気特性にも優れているのでコネクター、スイッチ、ソケット、コンピューター部品、自動車のヘッドライトハウジングやワイパーアームなどに使用されています。

PC:ポリカーボネート 通称;ポリカ

コンパクトディスク

比較的燃えにくく、赤い炎を伴い黒煙が出ます(黒煙が多いものの方が分子量は多い!?)。消毒液の臭いがします。

耐衝撃性に大変優れたプラスチックでありハンマー等で叩いてもなかなか割れません。その上、透明度が高いため様々な分野に使用されています。CD(コンパクトディスク)、機動隊の盾、自動車駐車場の屋根に使う波板、高速道路の防音板、自動車のヘッドライトカバーなど。

分子量が多い程、強度があり、シート材は分子量約28,000、CDでは約17,000のグレードが使われます。弊社での取扱量の多い商品の一つです。

ポリカ波板

PC ALLOY:PCアロイ

 最近、特性や性能をアップするために2種類の異なるプラスチックを複合させたポリマーアロイがよく使われるようになってきました。 PCにABSを混ぜ合わせたPC/ABSアロイがその代表的なもので、携帯電話のボディなどによく使用されています。
そもそもPC/ABSアロイは、従来ABSの難燃グレードが使用されていた用途(OA器機、自動車、電気部品等)において、環境への配慮から難燃剤の成分である三酸化アンチモンを使わず、もともと難燃性のPCを複合させることによって作られたと聞いています。他にPC/PETやPC/PBTほかPBT/ABSなど様々な組み合わせがあります。
これらのポリマーアロイの臭いによる判別は当然ながら難しく、今後更に様々な組み合わせのポリマーアロイが増えることを考えると、成形ロスやランナー、粉砕品などの発生元(工場)での品種(グレード)単位での管理が重要になってくると思われます。 尚、弊社でもPC/ABSアロイは取り扱いを既に始めています。

 携帯電話

さいごに

 尚、最初に書きましたが、この見分け方は私共の主観で記述しております。嗅覚は千差萬別ですので、皆様には記述した臭いと全く違って感じられることもあると思います。その点はご容赦願います。ともあれ是非皆さま自身で一度臭いを嗅いで試してみて下さい。 嗅覚を養う訓練は、毎日午前中に20分程度行うのがよいそうです。皆様の参考の一助となれば幸いです。

〔執筆担当:本城守 初回記載:1999年1月〕

 

 

注意注意マーク

プラスチックは石油よりつくられた大変燃えやすく危険なものです。燃やして臭いをかぐことにより、呼吸器系の発作を誘発したり、健康に害をおよぼす可能性があります。この頁の判別法を試す場合は各自の自己責任において行って下さい。 弊社では一切責任を負いません。

また小学生や子供は危険ですので決して真似をしないで下さい。

 

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