プラスチックの特長と簡単な見分け方: その弐
代表的な樹脂の特長
- PE:ポリエチレン(LDPE,HDPE,LLDPE,EVA)通称;ポリ
- 本来の色は半透明、火を近づけるとすぐ軟化して、垂れながら燃え、ローソクの臭いがします。
- LDPEは射出成形、押出成形(フイルム、シート,電線)、中空成形等用途が広く、柔らかいプラスチックです。
フイルムの場合、引っ張って伸びるようならLDPEです。
- HDPEもLDPEとほぼ同じですが、LDPEに較べると硬いプラスチックでポリバケツ、灯油カンなどが代表例です。
フイルムの場合、引っ張っても伸びません(例.オシボリの包装)。
(LDPE、HDPEの違いはペレットを歯で噛んで硬さで判断します。)
- LLDPEもLDPEと同じですが、フィルム用途が中心でLDPEより引張強度が勝ります。
EVAは柔らかくタッパーウエア等がその代表例です。
- PP:ポリプロピレン 通称;ピーピー
- 燃えやすく甘い臭いがします。その組成によりホモ(単独重合体)、コーポリ(共重合体)、
ランダムと分かれます。これらは使用用途により選択されますが、一般にホモは鮮やかな色彩に着色
できますが、コーポリではできません。そのかわりコーポリは耐衝撃強度がホモより優れます。
代表例:洗面器(ホモ)、洗濯機の脱水槽(コーポリ)
- フイルムではOPPフィルム,CPPフィルムなど透明度が高いので、タバコ包装、御菓子包装紙によく
使われます。CPPフイルムのロスは、弊社が輸出し立派に再利用されてます。
- PS:ポリスチレン 通称;スチロール
- すぐ軟化、多量の油煙を出して燃えます。またガソリンに溶けることも特徴です。
- GPPSと耐衝撃強度を備えたHIPSとに分かれ、用途によりGPとHIを混ぜ合わせて使用します。
GPPSは、本来透明で硬いプラスチックですが衝撃に弱く、アイスクリームの匙や透明の定規などに使用されます。
- GPPSを発泡させたもの(EPS)は、発泡スチロールとして知られています。
尚、この発泡スチロール製のトロ箱は、魚市場で使用されますが、衛生上の問題で一度きりの
使い捨てとなります。ですから毎日築地市場などから使用済トレイが大量に発生します。
これらを減溶機にかけ固めたものは、業者間でAランプと呼ばれ、安価で中国に輸出されています。
弊社の主力商品であるHIPSの粉砕品は、アイスクリーム、ヨーグルトの容器や洗面台のボディ用シートなど
のロスですが、中国でこのAランプと混ぜ合され、適度の耐衝撃性を備えた黒ペレットにリサイクルされ、
米国向のビデオカセットテープに再利用されています。
- ABS
- 燃やすとPSに似てますが、幾分シンナー臭く感じるはずです。PSと異なりガソリン
には溶けません。
- アクリルとブタジエン(ゴム)とスチレンを重合させたプラスチックで、HIPSより弾性があり、表面に艶が
あります。主な用途としては、テレビ、洗濯機のボディやフロッピーデスクなどです。
- PA:ポリアミド 通称;ナイロン
- 燃え難く黒煙は出ません。羊毛の臭いがします。
6ナイロンと66ナイロンを見分ける目安は、火をつけて引っ張ると、6ナイロンはよく糸が伸びますが、
66ナイロンはすぐ糸が切れるということです。
- 用途は、テグス、ギア、パンテイーストッキング、バトミントンの羽根の他、耐磨耗性に優れる為
弊社が輸出したリサイクル原料は、事務用椅子の足部やキャスターなどに多く使われています。
- POM:ポリアセタール
- 燃やすと青い炎が出て、目を刺激するホルマリン臭がする。
(燃えているのか消えているのか判別しにくいので注意)
耐磨耗性、耐衝撃性に優れギヤなど工業部品として使用される。
- PET:ポリエチレンテレフタレート 通称;ペット
- 燃え難いが、甘酸っぱい臭い糸は良く引きます。
ご存知のようにペットボトルは、清涼飲料水のボトルとして使用されています
(キャップはPP)《ドイツでは洗浄して20回以上再利用するそうです。
→プラスチックニュースへ》。
尚、洋服の素材ポリエステルとはこのPETのことです。
- PMMA:アクリル 通称;アクリ
- 透明度が高く、極めてガラスに近いプラスチックです。キャスト(Cast)タイプと一般タイプとに分かれ
(繊維は別)、燃やすとCASTタイプはパチパチと音を出して燃え、火を消すと
燃えた後がツルッとしていて糸は引きません。このCASTタイプのリサイクルは、
釜で炊き一度気化させたガスを冷却してモノマーにして板を作る(還流)という方法をとります。
普通のアクリは自然に燃えて、糸を引き、消した後アブクが出来たようにふくれます。
CASTタイプと共に黒煙は出ず、匂いも悪くありません。
弊社から中国に送られたCASTタイプシートのハギレは還流されて麻雀牌となり中国の人達の娯楽道具とし
て活躍してます。
- アクリルにゴムを入れて強度をより強くしたIRタイプはゴムが混入しているので燃やすと
黒煙が出ます。
- PBT:ポリブチレンテレフタレート 通称;ピービーティー
-
名前から分るようにPETの親戚で、鋼性に優れ、磨耗が少なく、高い温度で使用できるのでコネクター、スイッチ、
ソケット、コンピューター部品などに使用されています。ガラス入り難燃を弊社では多く販売しています。
- PC:ポリカーボネート 通称;ポリカ
- 燃やすと黒煙が出(黒煙が多く出る方が分子量が多い!?)、消毒液の臭いがします。
CD(コンパクトディスク)、機動隊の盾、自動車駐車場の屋根に使う波板、高速道路の防音板、
自動車のブレーキランプ等様々な分野で使われてます。分子量が多い程、強度が高く、シート材は
分子量約30,000、CDでは約17,000のグレードが使われます。弊社の取り扱い量の多い商品の一つです。
- PC ALLOY
-
最近各プラスチックの良い特徴を併せたり、その性能をアップする為に異なるプラスチックを複合させたアロイ
プラスチックがよく使われるようになってきました。
PCにABSを混ぜ合わせたPC/ABSアロイがその代表的なものです。
そもそもPC/ABSアロイは、従来ABSの難燃グレードが使用されていた用途(OA器機、自動車、電気部品等)
において、環境への配慮から難燃剤の成分であるアンチモニーを使わず、もともと難燃性のあるPCを複合
させることによって作られたと聞いています。
これらのアロイプラスチックの臭いなどによる分別は当然ながら難しく、今後益々様々な組み合わせの
アロイが増えると考えると、スクラップ(粉砕品)発生先(工場)でのグレード単位での管理が重要になってくる
と思われます。
尚、弊社でもマルチロンやサイコロイなど特定ブランドの取り扱いを既に始めています。
以上が主だったプラスチックの特徴と判別法ですが、これからも気がついた点は御案内しますので、
弊社のホームページをご覧下さい。
尚、嗅覚は千差萬別です。是非皆さん自身で一度臭いを試してみて下さい。訓練には毎日
午前中20分程度行うのが一番効率がよいそうです。
最後に、このページは私の全くの主観で記述しましたので、今後も修正していきたいと考えております。
皆様のご指導、ご意見をお待ちしております。→メールを送る
執 筆:本城 守
更新日:1999年1月17日
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